筋肉づくり、マッスルアップ
筋肉づくりの基本はトレーニング+栄養+休養だ!
CONTENTS
■アナボリック・ドライブ
■各種チームの取組み
■初級・中級・上級
■マッスルアップスポーツフーズ
スポーツ栄養学博士
杉浦克己
(季刊PENTA No.6より 1999)
produce by SNL

■アナボリック・ドライブ

 筋肉づくりを目指すには、レジスタンス・トレーニングによって筋肉に刺激を与え、筋肉の材料としての栄養を与え、回復期間としての休養を与える必要がある。
 栄養面で重要なのは、血糖値を維持するための糖質が第1位、筋肉の成分として最も多く含まれるタンパク質が第2位 となる。このため、食事の内容としては、糖質の多いごはん、タンパク質の多いおかず(肉、魚、卵)や牛乳が毎食食卓に並ぶことが望ましい。

 筋肉づくりのエキスパート、ボディビルダーのあるトップ選手は、昼食におにぎり2個とノンオイルのツナ缶 を食べている。筆者がアメリカのベニスビーチを訪れた時も、ゴールズ・ジムのトップ・ビルダーは、昼食にスチームしたライスとチキン(胸肉)とベジタブル(ニンジン・インゲンなど)を食べていた。10年以上前の大学生ビルダー(小山氏や小沼氏の青年時代)は、お金がなかったので安売りのサバ缶 をまとめ買いし、3回ゆでこぼして油抜きをして食べたそうである。

 さて、現在は医科学の進歩によって、特定の栄養素や物質を、特定のタイミングで摂取することが、「ホルモン分泌を含めた筋肉づくりに、身体を向かわせる」ということがわかってきた。これを、コルガンはその著書「オプティマム・スポーツ・ニュートリション」(1993)の中で、「アナボリック・ドライブ(同化の推進)とアンチ・カタボリック(抗異化)」と呼んでいる。そして効果 があるとされる特定の栄養素や物質は、エルゴジェンあるいはエルゴジェニック・エイドと呼ばれる。
 筋肉づくりに働くエルゴジェンとしては、プロテイン、アミノ酸(BCAA、アルギニン、リジン、オルニチン)、クレアチン、HMβ、クロミウム・ピコリネート、バナダイル・スルフェイト、OKG(オルニチン α-ケトグルタール酸)、そして各種同化ホルモン、成長ホルモンやテストステロンが挙げられる。しかし、健康を損なわずに筋肉づくりを行うには、ドーピング禁止薬物や頭痛など副作用のあるミネラルを摂取することは論外である。  

■各種チームの取組み

1. アイスホッケー日本代表
 98年の長野オリンピックで人気を博した種目の一つにアイスホッケーがあった。北米のプロリーグNHLのスター選手が出身国の代表となり、まさに氷上の格闘技を展開したのである。
 日本チームは、日系人の帰化が話題となったが、選手のフィットネス向上のため、カナダからトレーニング・コーチを招き、徹底的なウェイト・トレーニングを行った。我々も栄養面 で関わり、日常の食生活の改善、国内外の遠征時の食環境の整備、サプリメントの使い方のアドバイスを行った。
 この時に目指したのは、まずタンパク質を体重1kgあたり2g以上摂取すること、そのためにプロテインの摂取を1日に2から4回とした。プロテインの種類は、瞬発競技用のホエイプロテインあるいはスピード競技用のBCAA配合タイプとした。練習や試合の前後には、糖質補給が重要なので、運動1時間前にエナジーゼリーを、運動直後にデキストリン・ドリンクを用意した。さらに、クレアチンを用意し、運動後に補給した。トレーニングと栄養の摂取がうまくかみ合い、筋肉量 は増加し、体脂肪率は適正値に近づいた。予選リーグでは、2敗1分けであったが、順位 決定戦では、オーストリアに勝利し、見事な番狂わせを見せてくれた。

2. 高校女子バスケットボールチーム
 茨城県の聖徳高校は、体育科が設置された女子校である。同校ではバスケットボール部の強化の一環として、栄養管理を重視している。実際には、家庭科の喜多村先生が部の副顧問となり、選手の食事調査と指導、父兄に対する啓蒙活動、寮の食事の改善を行った。自宅生と寮生の食事は、5回にわたる食事調査によって徐々に改善され、現場では練習前後のエナジーゼリーと、練習後のプロテインの摂取を行った。プロテインは就寝前にも摂取し、これにより、体重1kg当たりのタンパク質摂取量 は、開始時1.5gにも満たなかったのが1.9gまで増加し(図1)、トレーニング効果 を最大限に引き出して、体脂肪率の減少(平均3kg以上!)と増加(平均3kg以上!)につながったのである(図2)。
 試合成績も向上し、インターハイ初出場と一回戦突破を果たした。詳しい内容は、平成8年度の日本体育協会スポーツ医・科学研究報告・ジュニア期のスポーツライフに関する研究−第3報−を参照されたい。

(図)
(図)

■初級・中級・上級

 そこで、読者の皆さんの筋肉づくりについて考えてみよう。
 初心者は、まずしっかりと食事をすることを心がけて欲しい。朝・昼・夕の食事をきちんと食べ、牛乳も飲むこと。それでも朝ごはんの量 が足りないようであれば、プロテインを牛乳に溶かして飲めば良い。また、運動直後のタンパク質の補給は、身体づくりに良いとされるので、牛乳やオレンジジュースにプロテインを溶かして飲む。まずはここから始めて、必要に応じて、食後や間食にプロテインを飲む回数を増やす。選ぶプロテインは自分の競技特性を考え、瞬発系、スピード・球技系、持久系のプロテインから選ぶと良い。
 中級者はトレーニングにも慣れて、さらにステップアップしたい人。トレーニングの強度と量 が増してくるので、効率の良い栄養摂取を考えないと、疲労が取れなかったり、筋肉の発達が遅れたりする。プロテインは、含有率の高いものや、ホエイを用いたものを選び、さらに回復を早めるマルチタイプのビタミン・ミネラルやアミノ酸を用いる。
 そして上級者は、アナボリック・ドライブを少し心がける。ホエイプロテインや、さらに吸収が早いホエイペプチドを運動後や就寝前に。トレーニング前やトレーニング中には分岐鎖アミノ酸(BCAA)を摂取。さらに、クレアチンを用いて、セットごとのレップ数を高めていく。ビタミン・ミネラルは中級者と同様。
 また、共通することだが、トレーニング前には低血糖ではいけない。脳のヤル気が落ち、パワーも低下する。これを防ぐには、エナジーゼリーやプロテイン・バーを間食として補給しておくと良い。
 ビルダーでもトップクラスになると、よりアナボリック・ドライブに走り、さまざまな外国製サプリメントを用いている。もちろん禁止薬物には手を出していないと思う。ただ、皆さんのトレーニング目的が、「究極の筋肉づくりと脂肪のカット」ではなく、自分の競技にウエイト・トレーニングを生かそうというなら、上級者編のクレアチンまでで、十分に目的を達成できるであろう。