スポーツ障害の予防と回復

■スポーツ障害の原因は栄養不足

 スポーツ選手の障害といえば、骨・関節・靭帯・筋膜などのケガ、筋肉痛や筋肉のケイレン、そして貧血が挙げられるだろう。新聞に運動中の骨折が増えているという主張の記事が掲載されると、その原因は4つ考えられている。

(1) 昔からケガは多かったが、最近はスポーツドクターが多くなり、気軽に受診でき、ケガの検出率が高まったという説
(2) 日本式の畳に座る生活が少なくなり足腰が弱い、また小さい頃から活発に運動していないので調整能力が低いという説
(3) 若年層のスポーツ熱が過熱し、オーバートレーニング気味であるという説
(4) 飽食の世代はガツガツしていなくて、食事による栄養摂取量が少ないという説

 そこで、スポーツの有名高校のコーチにインタビューすると、(1) はあるかも、(2) は確かにひ弱だ、(3) は中学・高校レベルなら昔の方がしごかれた、(4) は全くその通りという意見が返ってくる。食べずに運動したら、体重が減りそうなものだが、運動中以外は(授業中の睡眠など)省エネを図っているので、体重を維持しているのだろうとのこと。
 中国と日本の高校トップ選手の栄養を比較した研究(Okano ら1993)からも、日本選手の食事量 や栄養素摂取量は中国選手の半分以下であることがわかっている。

■回復の栄養 〜基本編〜

1. タンパク質

 予防については、通常練習期の食事を「栄養フルコース型」にして、しっかり食べることに尽きる。よく食べる選手は、身体が頑丈である。しかし、それができないから、いざ障害になってから、あわてふためくのだろう。これは試合の前の晩になって、あわててスタミナをつけようとする行動と同一である。
 回復に必要な栄養は、まずタンパク質である。タンパク質は筋肉の乾燥重量 の80%を占め、骨も血液も内臓も作っている。消耗を修復する材料として、第一に考えなければならない。さらに酵素、ホルモンをつくり、免疫にも関係しているので、身体が健康状態でない時には特にしっかり食べる必要がある。
 しかし、一方で摂取エネルギーは抑えめにしなければならない。ケガにしろ、貧血にしろ、通 常と同程度の運動はできないと思われるので、タンパク質を補給しようとして、おかずや乳製品をたくさん食べれば太ってしまう。
 そこで、3食の食事前に、低脂肪牛乳200mlにプロテインパウダーを大さじ2杯溶かして飲むようにする。この時選ぶプロテインは、タンパク含有率が60〜90%のものが良い。食事前にプロテインミルクを飲むと、お腹が少し張るので、食事量 を通常の8分目程度に抑えることができる。このようにしてエネルギー量 を抑え、しかしタンパク質はプロテインから十分に摂取するというテクニックだ。

2. カルシウム・鉄

 また、ミネラルの摂取も重要である。骨に障害がある場合はカルシウム、貧血なら鉄を強化する。カルシウムをどの程度摂取する必要があるかについては、一定の決まりがあるわけではないが、一般 人の必要量600〜800mgに対し、1200〜1500mgにまで高める。食事とプロテインミルク3杯でカルシウムが1000mg近くまで取れるので、あとはカルシウムのタブレットを2〜4粒くらい取る。牛乳の飲めない人は、その分をタブレットに頼る必要があるかもしれない。

3. 鉄

 鉄は一般人の必要量が、男子10mg、女子12mgであるが、貧血の回復では30mgくらいに高める。貧血になるような選手は、もともとの摂取量 が10mgを下回る場合が多いので、それには鉄4mg配合のタブレットなら、1日6粒、3食後に2粒ずつ摂取する。鉄が良いからといって、いろいろな補助食品や鉄剤を取りすぎないように、量 を考えて決めると良い。

■回復の栄養 〜応用編〜

1. コラーゲン

 近年、リューマチ・関節炎の研究から、コラーゲンが骨形成、関節炎、靭帯損傷、アキレス腱炎に有効である可能性が示唆されてきた。米国ハーバード大の研究では、タイプコラーゲンが関節炎を改善するという結果 が出て、サイエンス誌に掲載された。また、一連の研究はドイツで行われており、特に興味深いのは、コラーゲンペプチドが、同じ組成のアミノ酸単体よりも、関節に多く取り込まれることがわかってきたことである。
 日本では美容目的で使用されているコラーゲンが、ドイツをはじめとするヨーロッパ、そしてアメリカでは障害からの回復に用いられているのである。スポーツ選手ではコラーゲンの有効性を実験したことがないが、障害の選手に試してもらったことはある。トップ選手では、長年アキレス腱炎を抱えていた陸上競技短距離選手、大事な試合1ヵ月前に肩を脱臼した柔道選手、ゴール前の競り合いで落車し手首を複雑骨折した自転車選手に、1回10粒のコラーゲン・タブを1日に3回以上摂取してもらったところ、約1ヵ月で回復し、練習や試合に打ち込めるようになったと聞いている。柔道選手と自転車選手の場合は、整形外科医の見立てでは、いずれも3ヵ月かかるというものであった。見立てにある程度の期間的余裕を持たせたとしても、回復は驚異的に速く、ドクターもびっくりだったと言う。

2. 抗酸化ビタミン

 もう一つは、抗酸化ビタミンである。障害の原因の一つとも考えられるフリーラジカルに対し、その還元力をもって身体を守るのが抗酸化ビタミンである。β-カロチン、ビタミンC、ビタミンEの3種頬を摂取することにより、過酸化脂質が低下するというデータもあるので、回復期には高めておきたいビタミンである。