暑さ対策 水分&栄養補給

■スポーツ現場も栄養補給の場だ

 夏は温度も高くて、生理学的にはとてもスポーツ向きのシーズンではありませんが、学校も休みになり、時間もたくさんあるので、練習時間は長くなる傾向にあります。練習が終われば、カラダはバテバテ、のどはカラカラ、食欲なしの肉体疲労児状態。選手ならだれでも経験したことがあるはずです。ここではスポーツの現場でできる運動前・運動中・運動後の栄養補給について考えてみましょう。

■運動前は糖質、ビタミンとコップ1杯の水

 運動前に必要な栄養は、糖質とビタミンです。ごはん、パン、うどんなどをしっかり食べたかを確認しましょう。
 数年前、柔道の代表合宿に行った時は食事が2回制であり、朝食がないので選手は練習1時間前にバナナやオレンジにかぶりついていました。午前練習は強度が高いため、重いものは食べられないのですが、空きっ腹でも稽古はできません。糖質とビタミンに重点をおいた工夫だったようです。今は3食制に変わり、稽古の2時間以上前に朝食を食べています。
 運動前に全く時間がない時は、ブドウ糖しか摂取できません。ブドウ糖にビタミンB1を配合したタブレットがあります。ただし、運動の20〜30分前に大量 (50g以上)に摂取すると、血糖値の急激な上昇、インスリンの分泌、さらに血糖値の急激な低下を招くので、摂取は運動直前に5g程度にすると良いでしょう。
 また、運動前に体内の水分状態を良好にしておくため(euhydrate ユーハイドレートな状態という)、コップ1杯の水を飲んでおくことも重要です。

■運動中はスポーツドリンク、長い競技はデキストリン

 運動中は、スポーツドリンクを飲む選手が増えています。ミネラルとともに、脳のエネルギーである糖質も含まれていることがポイントです。ドリンクの糖濃度は、ブドウ糖で2.5%以下、砂糖でも4%程度のドリンクの方が、水分の吸収は速いのです。甘ったるく感じたり、胃に溜まるように感じたら、少し薄めましょう。
 飲む量は、運動前後に体重測定を実施し、必要量を個入レベルで決めていく必要があります。サッカーのジュニアユース代表やユース代表の合宿では、体重測定を毎回実施し、自分の体重変化から自己管理法を学び取るように意識づけを行っています。水分と糖分の補給が上手にできると、のどの渇きが抑えられ、運動後の清涼飲料のガブ飲みがなくなります。
 さて、2時間以上の長い練習や強度の高い運動(大事な試合など)をする場合は、エネルギー切れも心配です。後半のバテとは、前半で筋肉のグリコーゲン(糖質)を消費してしまっている場合が多いようです。こんな時は、デキストリン(コーンスターチを酵素分解した糖質)を使ったエネルギードリンクをハーフタイムやセット間に用います。
 実際、我々が行なったサッカーのシミュレーション実験では、ハーフタイムに糖濃度20%(糖質50g入り)のデキストリン溶液を飲むと、これが約10分間で吸収され、後半の強力なパワー発揮につながりました。
 現在はサッカーの代表でも、ハーフタイムや延長の時にデキストリンを用いる選手が増えています。野球でも完投型のピッチャーが1イニング投げるごとに少しずつ補給しています。こうすると、7回を過ぎても「球がオジギ」しなくなるそうです。もちろんマラソンや競歩、自転車、トライアスロンのレース中にも使えるでしょう。長時間練習の時は、途中で休憩を取り、飲んでみてください。その後の動きが違ってくると思います。

■疲労回復には運動直後にデキストリン

 1988年にアイビーらは、運動直後に、糖質補給することが筋グリコーゲンの回復に効果 的であることを報告しました。この時の糖質は、血糖値を上昇させるものでなくてはなりません。つまり、ブドウ糖やデンプンが良いのですが、東海大学スポーツ医科学研究所の寺尾博士は、激運動の後では、同じブドウ糖でも、数分子が結合しているデキストリンが効果 的であることを証明しました。  運動が終わったら、すぐに糖質を摂取して、取り合えず筋グリコーゲンを少し回復する。このことにより、その後の食事を落ち着いて食べることができます。「食事の前に甘いものを取るなんて」と敬遠する人もいますが、実際はかえって食欲が増すから不思議です。この時必要な糖質の量 は、体重1kgあたり0.7g以上。70kgの選手なら約50g、すなわち200キロカロリーです。200キロカロリーぴったりに設計されたゼリー食品もあるので、試してみてはどうでしょうか。  アトランタや長野のオリンピックに出場したトップ選手は、練習直後にも試合直後にも、このような科学的補給法を採用していました。夏場に一生懸命練習に励んでいる選手は、このようなスポーツの現場での補給によって、逆に食欲も高め、より効率的なトレーニングを積むことができるはずです。